黒酢の原料は基本的に玄米が使用されています。一般的に米酢の原料は「精米」が使われていますが、黒酢の発祥地である鹿児島福山町では「玄米」が使われています。玄米とは、秋に収穫にされたお米から籾殻(もみがら)だけを取った状態のお米のことをいい、精米されたお米よりも栄養価が高いといわれています。玄米は「生きている米」と呼ばれていることからも栄養価の高さが想像されます。そして、実際に精米と玄米を水に浸すという実験を行ったところ、精米された白米の場合は、水に浸しても当たり前ですが何の変化も起こりませんが、玄米の場合は、水に浸して時間が経つと芽が出てきました。そのことから、玄米が生きているといわれるようになったとされています。ちなみに、麦も玄米と同様に、玄麦であれば水に浸すと玄米と同じように芽が出てきます。黒酢の効果を感じるのは、玄米が生きているという生命力の強さが無意識に感じられているからではないでしょうか。
原料を玄米にこだわるのは、天然の有用成分がたくさん含まれているからですが、黒酢をつくる上で難しいとされるのは、原料の出来具合によって、味や質が変わりやすいことのようです。しかし、黒酢の発祥地である鹿児島県福山町は、夏は涼しく冬が暖かいという過ごしやすい気候の土地柄、黒酢を造る上で最適な環境が整っています。黒酢の原料となる鹿児島県産の良質なお米、原料の質をより高めるためにもシラス台地に湧き上がる天然水は不可欠であり、加えて昔ながらの伝統製法を変えずに行うための薩摩焼のかめ壷(アマン壷)が揃っています。さらに、玄米の素材選びは厳しく行っており、こだわっているところはミネラル分の豊富な丸玄米を使っているところです。丸玄米とは、削る前の玄米のことをいいますが、丸玄米の殻はとても固いため、手作業で一つ一つの工程を丁寧に行っています。
原料と素材を大切に活かすためには、大変な手間と時間がかかってしまいます。しかし、このひと苦労が味と質を高めていることを、長い間黒酢造りに携わっている職人達はよくわかっているため、その手間を惜しむことはなく、だからこそ丁寧に造り上げているのです。黒酢の原料の良さが引き出されているのは、並々ならぬ黒酢への思いを込めた職人の方々が携わり、これまでの歴史を支えているからではないでしょうか。