あれは昭和二十七・八年頃のことです。
雨の日、私には学校に行くのに傘がありません。
戦死した父にかわり、必死に四人の子供を育てた母。
母は、私と同級生の友に声をかけ
悪いけど傘に入れてやってくれ、
と頼むのです。
私が入れば
自分の肩も半分は濡れるのに
いやな態度も見せず
傘に入れてくれた友。
「みっちゃん」本当にありがとう。
何十年も経ったある日、母が便りで
しとしとと淋しげな雨が降ると思い出すのだと、
ひねくれもせず育ってくれた子供に感謝だと・・・。
着る物、食べる物など飽食の今日では
考えられないあの頃でした。
風で破れてしまったビニール傘にも、
ありがとうを言って処分する此の頃です。
大阪府 若井様